k.マグダラのマリア

325年のニケーア公会議で勝利した司教アタナシウスは367年に『復活祭書簡』を各教会に送り、現在の旧約聖書、新約聖書以外の文献群は焚書されるように意図しました。
これら焚書された文献群の一部は古文献に名称のみ登場して『幻の文献』だったが、主に第二次世界大戦以降に各地で次々に発見されました(復活しました)。
有名なのは死海ほとりのクムランの洞窟で見つかった「死海文書」、上エジプトのナグハマディ村で見つかった「ナグハマディ文書」、その他にも「マリアの福音書」、「ユダの福音書」などがあります。
因みに焚書された主な理由は異端のグノーシスの文献だったという説が普通ですが、当時のグノーシス達の中で愛読されていたのは『光と闇の言語』を用いた「ヨハネの福音書」だったと調査した論文もございます。
根拠も示されずに初期カトリックにて焚書された文献の中にイエスの配偶者についての記載がありましたので紹介します。

(「フィリポの福音書」32節)*1
三人の者がいつも主と共に歩んでいた。それは彼の母マリアと彼女の姉妹と彼の伴侶と呼ばれていたマグダレネーであった。
なぜなら、彼の姉妹と彼の母と彼の同伴者はそれぞれマリアという名前だからである。(注:ヨハネ伝19.25)

(「フィリポの福音書」55節)*2
主はマリアをすべての弟子たちよりも愛していた。そして彼は彼女の口にしばしば接吻した。
他の弟子たちは彼がマリアを愛しているのを見た。彼らは彼に言った、「あなたはなぜ、私たちすべてよりも彼女を愛されるのですか。」
救い主は言った、「なぜ、私は君たちを彼女のように愛さないのだろうか」。

(「マリアの福音書」10節)*3
ペトロがマリアに言った、「姉妹よ。救い主が他の女性たちにまさってあなたを愛したことを。私たちは知っています。あなたが思い起こす救い主の言葉を私たちに話して下さい。
あなたが知っていて私たちの知らない、私たちが聞いたこともないそれらの言葉を。」。
注)マリアが一つの幻の中に主を見てその件を質問した際に、「心魂と霊との真ん中の叡智で幻を見る」と救い主より聞いたことをマリアはペトロに告げました。

*1 「ナグ・ハマディ文書Ⅱ」荒井献、大貫隆他訳、岩波書店、P68
*2 同上、P76
*3 同上、P121