g.AWAREプロジェクト

 魂を科学的に実証するアプローチとして、①蘇生者または②退行催眠時の証言を医師、研究者らが集めて考察した論文、著書が近年増えております。①蘇生者の証言では、元イギリスの医師でStony Brook University School of Medicine(米)の助教授のサム・パーニア(Sam Parnia)医師に注目します。

【AWAREプロジェクト概要】AWAreness during REsuscitation (AWARE) study
 2008年、イギリスのサウサンプトン大学にて、サム・パーニアを主任研究員とした「The AWARE」と呼ばれる過去最大規模の調査プロジェクトが開始され、因みにノーベル医学賞の受賞者も2名この研究プロジェクトには関係している。
 3カ国(英国、オーストリア、米国)における15の病院内の2,060名の心肺停止患者が対象となり、体外離脱現象の検証などが調査目的とされ、2014年には研究の第1フェーズが終わり、学術誌である「the journal Resuscitation(欧州蘇生協会機関誌)」にて結果が報告された。
 調査された患者のうち330名が心肺停止から生き帰り、その中の140名(約40%)が『心肺停止中に意識があった』事を報告し、2%は心停止中に病室で起きた出来事(看護師の名前、話した内容、他)をよく覚えており、『事実と一致することの検証』ができた。

 このサム・パーニア医師の著書の邦訳が2015年8月に出版されました。
「人はいかにして蘇るようになったのか、蘇生科学がもたらす新しい世界」春秋社

死はもはや「心臓が止まり、呼吸が止まり、脳が機能しなくなった時点」というような、特定の瞬間ではない。死後、平均三時間までは蘇ることが可能になっている現代・・・蘇生科学の発達により人々は死から蘇ることができるようになり、死後の世界を語り出す(紹介文+帯書きより)。

(AWARE実証事例1)57歳の男性の証言
・彼の意識は自分自身の体の上方から下の様子を眺めていた。
・病室では彼の心臓に電気ショックによる治療が2度行われた←事実
・「サラ」という名前の看護師が話していて、別のスタッフが「よし、助かったぞ」と言った。←事実

(AWARE実証事例2)51歳の女性の証言
・彼女の意識は天井のあたりにいて下の様子を見ていた。
・医師が彼女の喉に何かを入れていた。←事実
・会ったこともない看護師が「ヴェネッサ、頑張って」と胸を押してくれた。←事実
・血液ガスと血糖値を測っていたが痛みがなかった。←事実
・看護師は「444にダイヤルして」と言った。←事実

(薬物による幻覚との違い)※夢との違い by サムパーニア医師
・服薬して幻覚を見ている時は脳は機能しているがAWARE患者は脳は機能していない。
・薬を使った幻覚とAWARE患者の証言とはあまり似ていない。
・幻覚であれば異なる文化を持つ人々は異なる体験をするが、臨死(実際死)体験者の証言は共通点が多い。
・更に死後の世界の概念も持ち得ない幼い子供でも臨死体験を語っている。

(側頭葉癇癪との違い) by サムパーニア医師
・側頭葉癇癪による幻覚と一部臨死(実際死)体験者の証言は共通する。
・酸素不足による側頭葉の過活動の別の特徴が臨死体験者には見られない。

【AWAREⅡプロジェクト概要】Awareness and Cognitive Activity(認識と認知活動) During Cardiac Arrest(心停止) 
(Resuscitation Science Symposium 2019.11 論文) 以下に拙訳。
背景:
心肺停止(CA)生存者の50%は心的外傷後ストレス障害、落ち込みや不安を含む否定的な精神的な結果を報告し、10%は認識活動の回想と関連したポジティブな変化結果を報告し、2-3%は心肺停止中の体外認識を報告します。
しばしば、臨死体験という十分に定義済みでない語の使用に言及されますが、心肺停止生存者のこの特徴はよく理解されている病気のままです。
方法:
現在進行中の追加研究 (AWARE-II) において、潜在的記憶と外部記憶とをテストするために、施術中にイメージとサウンドを生成するタブレット端末を用いて、視聴覚刺激を管理する方法を適用しました。
結果:
病院内で心肺停止が5分以上続いた465人の内、生き返ったのは44 人(9%)で、インタビューに答えられたのは21人でした。答えられた人の中の4人 (19%)はハッキリとした(内在している)認知過程を含む記憶を報告しました。それらの記憶は、平安と喜び、親類に出会ったとか、(外部的な)認識を連想させる内容(例、人々が話していたこと、与えられた薬)とかです。
1人は手術中の音声刺激を正確に思い出すことができましたが、画像刺激を思い出せた人はおりませんでした。この限られたサンプルでは潜在的な学習の徴候がありませんでした。
我々は生存者の22人の自己申告された記憶の比較を行い、次のようなデータが分かりました。95%は喜びと平安を感じ、86%光と出会い、59%はトンネルに入り、54%は自身の行動と意図を含む人生の主な出来事のレビューと判断、95%は全体の感情が術後にポジティブに変化。
結論:
外部知覚と内部認識活動は心肺停止期間中にも起こっています。けれども、明白に思い出した内容が心肺停止中の認知過程の全部を十分に説明するのか、潜在的な記憶も同様か、については不明確です。
何人かの生存者において、記憶は人生の意義を大きくしポジティブに変化させ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のようなネガティブな心理とは対照的になります。
この意味においては、NDE(臨死体験)の代わりにより適切な言葉は、TED(死のトランス形成的な経験)であるかもしれません。
更なる研究が、心肺蘇生(CPR)中の潜在的学習と明白な学習の役割を詳細に説明するためと、どのように認知過程が復活後の脳品質と全体的な精神状態とに関連するのか説明するために必要です。